全仮名表記
赤字は現代仮名遣いと異なる部分です。
おやゆづりのむてつぱう※でこどものときからそんばかりしてゐる。せうがくかうにゐるじぶんがくかうのにかいからとびおりていつしうかんほどこしをぬかしたことがある。なぜそんなむやみをしたときくひとがあるかもしれぬ。べつだんふかいりいうでもない。しんちくのにかいからくびをだしてゐたら、どうきふせいのひとりがじようだんに、いくらゐばつても、そこからとびおりることはできまい。よわむしやーい。とはやしたからである。こづかひにおぶさつてかへつてきたとき、おやぢがおほきなめをしてにかいぐらゐからとびおりてこしをぬかすやつがあるかといつたから、このつぎはぬかさずにとんでみせますとこたへた。
しんるいのものからせいやうせいのナイフをもらつてきれいなはをひにかざして、ともだちにみせてゐたら、ひとりがひかることはひかるがきれさうもないといつた。きれぬことがあるか、なんでもきつてみせるとうけあつた。そんならきみのゆびをきつてみろとちゆうもんしたから、なんだゆびぐらゐこのとほりだとみぎのてのおやゆびのかふをはすにきりこんだ。さいはひナイフがちひさいのと、おやゆびのほねがかたかつたので、いまだにおやゆびはてについてゐる。しかしきずあとはしぬまできえぬ。※ 宛字「砲」の字音による。「無手法」であるとするなら「むてつぱふ」。