分かりやすいたとえ話

 最近「け」の発音が「き」と同じようになってしまう人が増えています。

 「きっこう」(結構)
 「きがをする」(怪我をする)
 「さきをのむ」(酒を飲む)
 「かぎにかくれる」(陰に隠れる)

 などと発音して、自分ではそのことに気が付いていないようなのです。
 今後このような人が増えていくと、文字に書くときにも「きがをする」と書く人が出てくるかもしれません。

 もし、将来ほとんどの人が「け」を「き」と発音して「き」と書くようになったとしたら、と想像してみましょう。
 すると「け」の文字を使う人は少なくなり、しまいには「け」と書く人がまったくいなくなることも考えられます。
 もし本当にそうなると、普通の人は「け」という文字を見てもどう読んでいいのか分からない状態になります。

今の私たちが昔の仮名遣いを見た時にとてもおかしな感じがするのは、このような状態なのだと考えて下さい。

 さてこの時に、「先に酒を飲む」という文章を仮名で書くと昔は「さきにさけをのむ」と書いたんだよ、と説明されたとしたらどう感じるでしょう。
 生まれたときからずっと「さきにさきをのむ」と発音し「さきにさきをのむ」と書いてきた人は、何で「さけ」なんてそんな変な書き方をするのか分からない、と思うに違いありません。
 でも、昔は「先」は「さき」と書き、「酒」は「さけ」と書いていたのだということを知っていれば、昔の文章を読むときにとても役立つことになります。

 

 上に書いたのはもしかすると、というたとえ話に過ぎませんが、日本語の歴史にはこれと同じようなことが実際にいろいろと起っているのです。
 仮名遣いの勉強をすると昔の発音や書き方のことがいろいろ分かってとても面白いと同時に、昔の本を読むときなどにも大変役立つことになります。



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