補講406教室

特別授業:「候ふ」の表記と発音について

 「候ふ」は元々サブラフと発音しましたから、平安時代には(濁音表記をせず)「さふらふ」と書きました。

 その後発音が変化して現在に至るまでの道筋は次の通りです。

元の語 発音 サブラフ サブラウ サブラォー サブロー
表記

さふ(ぶ)らふ

  
音便形 発音

-

サウラウ ォーラォー ソーロー
表記

-

さうらふ

語を前後に二分割して見てみませう。

前半部分 発音 サブ サブ サブ サブ (元の発音のまま)
表記

さふ(ぶ)

(一貫した表記)
  

発音

-

サウ サォー ソー 音便形の発生とその後の転呼

表記

-

さう

(音便発音の表記・その後の一貫表記)
  
後半部分 発音 ラフ ラウ ラォー ロー 転呼
表記

らふ

(一貫した表記) 

 単語後半の「らふ」部分は発音が自然変化(転呼)してきただけですから表記は一貫してゐます。

 それに対して前半の「さふ」部分がサブではなくサウと発音され始めたのは意識的なもの(音便)でした。
 従来の発音「サブ」と新しい発音「サウ」はどちらも行はれましたので、「候ふ」と書く語は二つあることになつたのです。

   表記 現代の読み方
候ふ 元の語 さふらふ ソーロー・サブロー・サブラウ
さぶらふ サブロー・サブラウ
音便形 さうらふ ソーロー

 現在の我々がこれを読むときには普通には「さふらふ」「さうらふ」共にソーローと読みますが、両者の区別を意識してサブロー、ソーローと読み分けることもあります。

 現代でも使はれるいはゆる候文の「〜候。」は音便形ですからひらがな表記は「さうらふ」です。「ソロ」と読むのならば別の語形ですから表記も「そろ」となります。

元の語形の表記「さふらふ」が濁音を表示してゐないことにより、後には「サブロー」ではなく「ソーロー」とも読まれるやうになり、発音だけでは音便形との区別がつかないことになつた。



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