風の又三郎
詳しいあらすじ
九月一日
「どっどど どどうど どどうど どどう・・・」
谷川の岸の小さな小学校の朝。
二人の一年生が登校してきて、校庭から教室の中に見慣れぬ姿の少年がいるのを見つけて泣いてしまう。
嘉助たちもやって来る。六年の一郎もやって来て教室の中の少年に声をかけるが通じない。
風が吹いてきて少年はにやりと笑う。嘉助が風の又三郎だと叫び、みんなもそう思うが、外のけんか騒ぎのうちに少年は姿を消す。
そのうちに先生が出て来て、あの少年もそのあとからついて来る。
みんなで整列したあと教室に入ると、先生から少年は北海道から転校してきた高田三郎(五年)だと聞く。
教室のうしろに三郎の父が現れ、三郎と一緒に帰っていく。先生は三郎の父が鉱山師であるという。
九月二日
一郎と嘉助は朝早くから校庭で三郎を待つ。
三郎がやって来てみんなにあいさつするがみんなは返事しない。
三郎が校庭を歩測するように歩くと、つむじ風が起こって、嘉助は「やっぱり又三郎だ」と叫ぶ。
教室の中で佐太郎が妹のかよの鉛筆を横取りすると、三郎が佐太郎に自分の鉛筆を与える。一郎はそれを見て変な気持ちがする。
授業が始まり、数学では鉛筆のない三郎が消し炭で計算をしている。
九月四日
日曜日。
一郎はみんなをさそい、途中で三郎と落ち合って上の野原に向かう。途上、三郎はみんなの分からないようなことを言う。上の野原に着くと一郎の兄さんが迎える。兄さんは土手の中から出るなと言う。嘉助は土手の入口の丸太を外してしまう。
三郎は放牧馬を恐がるので冷やかされ、それなら競馬ごっこをしようと言う。
土手から逃げ出した馬を三郎と嘉助が追う。
嘉助は悪天候の道に迷って恐ろしい谷に行き当たり、そのあととうとう倒れてしまう。そのとき、三郎がガラスのマントを着て空に舞い上がるのを見る。
一郎の兄さんが探しに来て嘉助と三郎は助かる。
帰り道、嘉助は三郎が風の神の子だと言うが、一郎は否定する。
九月六日
放課後耕助がみんなをさそい山葡萄採りに行く。耕助はいやいや三郎も連れて行く。
途中、畑のタバコの葉をむしった三郎を耕助はしつこく非難する。
葡萄の藪で耕助はみんなあんまりとるなと言うので三郎は一人まだ白い栗を取る。
三郎が木の上から耕助にしずくをかけて言い争いになる。耕助はこの世に風などいらないと言い、三郎はひとつずつ例を挙げろと迫る。
最後に耕助の答えがおかしいので笑いとなり、二人は仲直りし、三郎はみんなに栗を分ける。
九月七日
暑い日となり、放課後みんなでさいかち淵へ行く。
三郎がみんなの泳ぎを笑い、一郎は決まりが悪くてみんなと石取りを始める。三郎も参加する。
大人達がやって来て発破漁をする。
みんなは下流で隠れて魚を取る。
三郎が大人のところに魚を返しに行き、みんなは笑う。
変な男が現れ、みんなはタバコの専売局の人が三郎を捕まえに来たと思って三郎を囲んで守り、男を囃し立てる。
「あんまり川をにごすなよ・・・」
九月八日
朝、佐太郎が毒もみ漁の山椒の粉を持ってくる。
放課後、さいかち淵で佐太郎が毒もみをするが、魚は浮いてこない。
決まりが悪い佐太郎は鬼っこをしようと言う。
みんなは追いかけたり捕まえたりして、最後に三郎が鬼になる。
嘉助が三郎を馬鹿にすると三郎は本気になって嘉助を捕まえて引っぱり回す。
嘉助はもうやめたと言い、みんなは岸に上がる。
そのとき天候が急変し、雷雨となる。
どこからともなく「雨はざっこざっこ雨三郎・・・」と聞こえ、みんなも声を揃える。
恐くなった三郎はぶるぶる震える。
九月十二日
「どっどど どどうど どどうど どどう・・・」
一郎は夢の中でこの歌を聞く。
起きてみると外は暴風雨。
一郎は空を見上げて胸騒ぎに襲われる。
急いで嘉助をさそって学校に行くと先生は三郎が父の仕事の都合で昨日去ったと言う。
嘉助はやっぱり又三郎が飛んで行ったのだと言い、一郎と嘉助は相手が本当はどう思っているのかと顔を見合わせる。