源 現代仮名遣い表記
源氏物語 (紫式部・西暦一〇〇一年頃以降)
冒頭の一節を現在の字種の仮名のみで示します。
いつれのおほんときにか にようこかういあまたさふらひたまひけるなかに いとやむことなききはにはあらぬか すくれてときめきたまふありけり
当時の発音を略式に記すと
インドゥレノオフォントキニカ ニョウンゴ カウイ アマタサンブラフィタマフィケルナカニ イトヤンゴトナキキファニファアラヌンガ スングレテトキメキタマフアリケリ
とならうかと思はれます。
「おほんとき」の「ん」は「み」の撥音便ですが当時は「む」と区別しない仮名が使はれたと思はれます。「やむごとなき」の「む」は元々「む」であるものですがこちらも「ン」のやうに発音されたでせう。
「にようこ」と「かうい」は漢語です。当時外来音を聴きなした通りに表記するとこのやうになり、一般人はその表記をもとに右記のやうに発音したでせう。知識人の発音はもつと本格的であつたかもしれませんが。
今音読するとすれば
イズレノオオントキニカ ニョーゴ コーイ アマタサブライタマイケルナカニ イトヤンゴトナキキワニワアラヌガ スグレテトキメキタモーアリケリ
です。これを仮に現代仮名遣ひ方式で表せば
いずれのおおんときにか にょうご こうい あまたさぶらいたまいけるなかに いとやんごとなききわにはあらぬが すぐれてときめきたもうありけり
となるでせう。
参考
いづれの大御時にか 女御更衣あまたさぶらひ給ひける中に いとやむごとなき際にはあらぬが 優れて時めきたまふありけり。
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