仮名遣ひを推定する方法

●「ア行」の音は元々語頭以外には存在しなかった。したがって語頭以外のア行音は「あ行」の仮名で書かない。多くは「は行」の「ひ、ふ、へ、ほ」である。(僅かにや行の「い、え」、わ行の「ゐ、う、ゑ、を」がある。)
  例:会ます 会 会ば な (老る 燃る くら 玉苗植る夏は来ぬ 据る やら)

●ただし、「い」ではない仮名の部分をぞんざいに「イ」と発音してできた新しい語(イ音便)、「う」ではない仮名の部分をぞんざいに「ウ」と発音してできた新しい語(ウ音便)では「い」、「う」と書く。
  例:書きて--書て ござります--ござます おめでたく--おめでた かりひと--かり

注:「ひ」の仮名自体が「イ」と発音されるやうになったもの、および「ふ」の仮名自体が「ウ」と発音されるやうになったもの(ハ行転呼音)は新しい語(音便)ではないのでそのまま「ひ」、「ふ」である。
  例:会ます 会

注:「ゐ」の仮名は「イ」と発音されるやうになったが、これも新しい語(音便)ではないのでそのまま「ゐ」である。
  例:

音便と転呼については原理ページなど参照のこと

●また、長音化や発音の便宜上で付加された母音、転訛、融合、短縮した母音は「あ行」の仮名で書く。
  例:いえ--いえ あね--ねさん そこら--そこら さ--さなる しんまへ--しんま かへる--ける しちゃはう--しちゃ

●また、掛け声、感動詞の母音は「あ行」の仮名で書く。
  例:え へ わっしょ

 ●同根語は同じ行内の文字が交替する。
   例:めく--めく 燃す--燃る--燃

 ●同根語は同じ文字で清濁が交替する。
   例:ちち(父)--ぢぢ(爺) (擦)る--る--れる

 ●「む」、「ん」、「う」は音便により交替する。
   例:行か--行か--行か かぐはしい→かばしい--かばしい

 ●発音の一部脱落によって採るべき仮名の候補が二つある場合は原則として前者を採る。
   例:はひいる(這ひ入る)→はる(入る)
     ただしその結果、漢字表記において振り仮名が一字も当てられない漢字が生じるときはこの限りでない。
     例:川和田→
×かはだ ○か

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