総目次   

速習版とびら 一章 動詞の「ふ」 二章 動詞・形容詞の「い」 三章 居るの「ゐ」 四章 送り仮名 五章 ワ行 六章 長音とジ、ズ 七章 覚えよう

速習版 練習


さっそく現代仮名遣ひの文章を歴史的仮名遣ひに直す練習をしてみませう。

ポイントは
現代仮名遣ひの文章中に「わ、い、う、え、お、じ、ず」の仮名を探す
です。

●例文

 国境の長トンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止った。
 向側の座席から娘が立ってきて、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ。娘は窓
っぱに乗り出して、遠くへ叫ぶよに、
 「駅長さあん、駅長さあん。」
 
 明りをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は襟巻で鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れて
た。
 も
そんな寒さかと島村は外を眺めると、鉄道の官舎らしバラックが山裾に寒々と散らばってるだけで、雪の色はそこまで行かぬちに闇に呑まれてた。

 問題の仮名は10個見つかりましたね。では歴史的仮名遣ひに直してみてください。
 (下のボックス内で書き換へられます。)

 解答
  ↓
  ↓
  ↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答

 赤字は現代仮名遣ひと異なる部分です。

 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止った。
 向側の座席から娘が立ってきて、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶ
やうに、
 「駅長さあん、駅長さあん。」
 明りをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は襟巻で鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れて
た。
 もうそんな寒さかと島村は外を眺めると、鉄道の官舎らしいバラックが山裾に寒々と散らばって
るだけで、雪の色はそこまで行かぬうちに闇に呑まれてた。

  長い→ 形容詞語尾の「い」なので「い」のままでよい。(二章
  いっぱいに→ 語頭の「い」はそのままでよい(五章)。あとの「い」は「ワ行の例外」、
               「よく使ふ語句」の中にあったので「いっぱいに」。(
七章
  ように→ 「ワ行の例外」、「オ段の長音」などの中にあったので「やうに」。(七章
  垂れていた→ 「〜ていた」は「〜てた」。(三章
  もう→ 「ワ行の例外」、「よく使ふ語句」の中にあったので「もう」。(七章
  らしい→ 「ワ行の例外」、「よく使ふ語句」の中にあったので「らしい」。(七章
  ているだけで→ 「〜ている」は「〜てる」。(三章
  うちに→ 語頭の「う」はそのままでよい(五章)。
  ていた→ 「〜ていた」は「〜てた」。(三章

 

 

次の諺を歴史的仮名遣ひに直しませう。

 井の中の蛙大海を知ら
 石橋を叩
て渡る
 とんびにあぶらげを攫
れる
 蓼食
虫も好き好き
 臭
物に蓋
 籔をつつ
て蛇を出す
 虻蜂取ら

 火のな
所に煙は立たぬ
 背に腹は代
られぬ

 解答
  ↓
  ↓
  ↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 解答

 井の中の蛙大海を知らず
 石橋を叩いて渡る
 とんびにあぶらげを攫
れる
 蓼食
虫も好き好き
 臭い物に蓋
 籔をつついて蛇を出す
 虻蜂取らず
 火のない所に煙は立たぬ
 背に腹は代
られぬ

  井の中の蛙大海を知ら→ 打消しの「ず」は「ず」(六章
  石橋を叩て渡る→ 「〜いて」は「〜いて」(二章
  とんびにあぶらげを攫れる→ 「攫ふ」の活用だから「攫」(一章
  蓼食虫も好き好き→ 「食」(一章
  臭物に蓋→ 形容詞だから「い」(二章
  籔をつつて蛇を出す→ 「〜いて」は「〜いて」(二章
  虻蜂取ら→ 打消しの「ず」は「ず」(六章
  火のな所に煙は立たぬ→ 形容詞だから「い」(五章
  背に腹は代られぬ→ 「代る」(四章

 

 

●童謡を歴史的仮名遣ひにしてみませう。 

 もういくつ寝ると 正月
 
正月には たこ上げて
 こまを回して 遊びましょ

 早く来
 正月

 

 明かりをつけましょ ぼんぼりに
 
花を上げましょ 桃の花
 五人ばやしの 笛太鼓
 今日は楽し
 ひな祭り

 

 さくら さくら
 やよ
の空は 見渡すかぎり
 かすみか雲か に
おいぞ出
 
ざや ざや 見に行かん

 解答
  ↓
  ↓
  ↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 解答

 もういくつ寝ると お正月
 お正月には たこ上げて
 こまを回して 遊びま
せう
 早く来い来い お正月

 「もう」は「もう」(七章)。「ましょう」は「ませう」(七章)。「来い」は「来い」(五章)。

 

 明かりをつけましょ ぼんぼりに
 お花を上げましょ 桃の花
 五人ばやしの 笛太鼓
 今日は楽しい ひな祭り

 「ましょ」は「ましょ」でよい。「ましょう」ならば「ませう」(七章)。「楽しい」は形容詞なので「い」(二章)。

 

 さくら さくら
 やよ
の空は 見渡すかぎり
 かすみか雲か に
ほひぞ出
 いざや いざや 見に行かん

 語頭以外の「い」は「」、「お」は「」(五章)。「ず」は「」(六章)。

 



それでは今度は、書き直すのではなく、新たに歴史的仮名遣ひの文章を書く感覚を試してみることにしませう。
簡単なやり方は次の通りです。

●まづ「ふ」で終る動詞を一つ思ひ浮かべてください。
 現代仮名遣ひで「う」で終る動詞ですからたくさんあります。好きなものを一つ選んで下の記入ボックスに書き込みます。
 〜はない、〜ひます、〜へば などと変化させた形でも結構です。

 (例:笑ふ 貰ふ 縫ふ など)

●次にその後に、「ひ」にはならない「い」を含む語を書き込みます。
 〜い といふ形容詞か、あるいは(上に書いたのとは別の)動詞の 〜たい、〜ない、〜まい、〜らしい、〜いた、〜いて などの形でもよいでせう。

 (例:泣いて 書いた 美しい など)

●次に「てゐる」と書き加へてください。
 てゐた、てゐても などと変化させてもよいでせう。

 (例:てゐる てゐます てゐた など)

 

記入ボックス

 

最後に、書き込んだ3語を適当に動かし、あるいは変化させ、また足りない語句を追加して文章を作ります。

例:

笑ふ 泣いて てゐる →・・・→ 私は少しも笑ずにただ泣るだけだったのです。
貰ふ 書いた てゐます →・・・→ 名前を書た人だけ切符が貰たと伺ってます。
縫ふ 美しい てゐた →・・・→ 熱心に見てたのは美し着物を縫場面でした。

それでは例に倣って作文してみて下さい。

どうですか。うまく文章になりましたか。


これで歴史的仮名遣ひで文章を書く感覚を何となく掴んで頂けたのではないでせうか。

 

●そろそろコツが分かってきたでせうから  試験を受けてみませう。


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