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速習版へのとびら 簡単に覚えられる「歴史的仮名遣ひ」

一章 動詞の「ふ」 二章 動詞・形容詞の「い」 三章 居るの「ゐ」 四章 送り仮名 五章 ワ行 六章 長音とジ、ズ 七章 覚えよう 練習

 歴史的仮名遣いを読むだけではなく、書くときにも使おうとするのにはどんな意味があるのでしょうか。
 日本人は大昔から昭和の前期まで、歴史上一貫して仮名を「昔から書かれて来た通りに書く」という意識で書いてきました。ですから、いつの時代でも昔の手紙や文学作品を違和感なく読むことができました。ところが現代人だけは仮名を「昔の人が書いたのとは関係なく」今発音する通りに、という意識で書いています。ですからほんの数十年前の日本語を非常に読みにくく感じてしまいます。

 何でもよいのですが例えば「さういふ」という文字を見ると日本人は千年以上もの間、誰しも容易にこれを発音し容易に同じ意味を読み取ってきました。同じ日本人だから当たり前のことだ言えそうですが、ところが昭和以降生れの現代人だけがそれができないのです。何か長い歴史の中で私達だけが仲間外れに遭っているような気がしませんか。現代において歴史的仮名遣いでものを書いてみることの大きな意味はここから発しているのです。

 歴史的仮名遣いで文章を書いてみるということは、伝統的な仮名の扱い方に立ち帰るということを意味し、またそれは日本人の言語意識の長い歴史に連なってみるという行為でもあります。
 さて、それではその行為は一体どれぐらい難しいことなのでしょうか。いや、それは案外に簡単なことなのです。

現代仮名遣いで文章を書いてみて下さい。

その中に「わ、い、う、え、お、じ、ず」の仮名がありますか。

ない時はそのままでよいのです。

 「僕は骨が治ったので今日久しぶりに学校へ行きました。算数と国語と社会を勉強しました。給食は僕の大好きなカレーでした。左手で上手に食べられました。午後は運動会の練習でした。僕は見学だけをしました。家へ帰ってすぐ風呂に入りましたが今日はあまり垢が出ませんでした。晩ごはんがカレーだったのでちょっとがっかりしました。あしたは僕の好きな運動会です。まだ走っては駄目なので応援で頑張ります。だから今晩は早く寝ることにします。」

 「日本の国会は衆議院と参議院によって構成される二院制である。両議院とも主権者である国民の選挙によって選ばれた国会議員によって構成される。衆議院議員の任期は四年であるが、議院の解散もある。参議院議員の任期は六年であるが、三年ごとに半数の議員が改選される。通常国会は毎年一回、1月中に召集される。臨時国会は必要により内閣が召集を決定する。特別国会は衆議院の解散による総選挙の後に召集されるものである。国会は会期の間だけ活動する。ただし委員会は閉会前に手続きを取ることにより、閉会中も審査を継続することができる。」

 上の文章には「わ、い、う、え、お、じ、ず」の仮名がありません。ですからこのままで既に歴史的仮名遣いと同じになっているのです。参考

 このように現代仮名遣いと歴史的仮名遣いは皆さんが思うほど大きく隔たっているわけではありません。
 ところが学校で習った古文が難しかったから仮名遣いも難しいだろうと誤解している方が多いようなのです。
 べつに古文の文法や単語を勉強する必要はありません。つい数十年前までの日本人はふつうに当たり前に歴史的仮名遣いで現代文を読み書きしていました。

 歴史的仮名遣いを手っ取り早く使うには、まず漢字で書ける部分は漢字で書くようにすることです。そうすれば多くの問題点を避けることができます。
 それでも避けることができない点については要領よく覚えていきましょう。

 具体的にいうと、現代仮名遣いで

 「ワ」「イ」「ウ」「エ」「オ」

 「オウ」「コウ」「ソウ」「トウ」・・・

 「ジ」「ジャ」「ジュ」「ジョ」「ズ」

 と書く部分だけが歴史的仮名遣いで別の仮名になる可能性があるのです(例外的に少数の「キュウ」「シュウ」「チュウ」・・・、「キョウ」「ショウ」「チョウ」・・・に注意が必要です。)が、そのうちの目立つ部分や基本的な部分から説明していくことにします。

 案外歴史的仮名遣いは簡単なものです。さっそくチャレンジしてみましょう。

 

冒頭で例に挙げた「さういふ」は「そういう」の意味です。

 第一章

 本格的な書き方

 
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