歴史的仮名遣いとは

歴史的仮名遣い 読み方の決まり

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歴史的仮名遣いとは

「仮名ができた最初の頃は発音の通りに書いた。その後発音は時代とともに変化して来たが、書き方は最初のまま変えずに書く。」

という原理のものです。ですから今それを読むときには当然今の発音によって読みます。

「ゐ、ゑ」を「イ、エ」と読む。現代仮名遣いで表すときは「い、え」と書く。

   ゐる→いる(居る)
   こゑ→こえ(声)  など

古文の例題

「を」を「オ」と読む。現代仮名遣いで表すときは助詞の「を」を除いて「お」と書く。

   をばさん→おばさん  など

古文の例題

「ぢ、づ」を「ジ、ズ」と読む。現代仮名遣いで表すときはほとんど「じ、ず」と書く。

   おぢいさん→おじいさん
   まづ→まず(先ず)  など

語頭以外の「は、ひ、ふ、へ、ほ」を「ワ、イ、ウ、エ、オ」と読む。現代仮名遣いで表すときは助詞の「は、へ」を除いて「わ、い、う、え、お」と書く。

   かは→かわ(川)
   会ひます→会います
   使ふ→使う
   まへ→まえ(前)
   おほい→おおい(多い)  など

古文の例題

「あう、あふ、かう、かふ、さう、さふ、・・・」などを「オー、コー、ソー、・・・」と読む。現代仮名遣いで表すときは「おう、こう、そう、・・・」と書く。

   あふぎ→おうぎ(扇)
   行かう→行こう
   さうです→そうです
   ありがたう→ありがとう
   たふとい→とうとい(尊い)
   死なう→死のう
   まうす→もうす(申す)
   だらう→だろう
   散らう→散ろう
   言はう→言おう など

   かうかう→高校
   ざふきん→雑巾  など

古文の例題


ただし動詞には注意が必要。

「〜あふ、〜かふ、・・・」などの動詞は「〜アウ、〜カウ、・・・」と読む。現代仮名遣いで表すときは「〜あう、〜かう、・・・」と書く。

まふ→舞う
いはふ→祝う

古文や文語文では「〜あふ、〜かふ、・・・」などの動詞を原則通り「〜オー、〜コー、・・・」と読むこともある。これを現代仮名遣いで表すときは「〜おう、〜こう、・・・」とする。

古文の例題

「いう、いふ、きう、きふ、しう、しふ、ちう、ちふ、・・・」などを「ユー、キュー、シュー、チュー、・・・」と読む。現代仮名遣いで表すときは「ゆう、きゅう、しゅう、ちゅう、・・・」と書く。

   きうり→きゅうり
   悲しう→悲しゅう  など

   いうぎ→遊戯
   えいきう→永久
   じふじ→十時  など

例外:
「言ふ」は「ユー」と読むが、現代仮名遣いで表すときは「ゆう」ではなく「いう」と書く。

古文の例題

「えう、えふ、けう、けふ、せう、せふ、てう、てふ、・・・」などを「ヨー、キョー、ショー、チョー、・・・」と読む。現代仮名遣いで表すときは「よう、きょう、しょう、ちょう、・・・」と書く。

   けふ→きょう(今日)
   でせう→でしょう  など

   にちえう→日曜
   けうしつ→教室
   てふ→蝶  など

古文の例題

漢字の音読みでは「きやう、しやう、ちやう、・・・」などを「キョー、ショー、チョー、・・・」と読む。現代仮名遣いで表すときは「きょう、しょう、ちょう、・・・」と書く。

   きやうだい→兄弟
   たいしやう→大将
   ちやうちやう→町長  など

古文の例題

漢字の音読みでは「くわ、ぐわ」を「カ、ガ」と読む。現代仮名遣いで表すときは「か、が」と書く。

   くわし→菓子
   マングワ→漫画
   ゆくわい→愉快  など

古文の例題

促音・拗音の大きな「つ、や、ゆ、よ」を小さい「ッ、ャ、ュ、ョ」として読む。現代仮名遣いで表すときは「っ、ゃ、ゅ、ょ」と書く。

   あつた→あった
   ちやんと→ちゃんと  など

古文の場合には助動詞の「む」を「ン」と読む。現代仮名遣いで表すときは「ん」と書く。

   逢はむ→あわん
   〜せむ→〜せん
   ありけむ→ありけん
   取りてむ→とりてん
   給ひなむ→たまいなん
   吹かむとす→ふかんとす
   まかりなむずる→まかりなんずる  など

例題

 上に挙げた決まりには例外や些少の追加項目がありますが省略します。完全版で学習してください。


 発音の変化についてひとつだけ説明しておきましょう。

 「きょう」を昔は「けふ」と書いたのはなぜでしょう。

 実は大昔(平安時代まで)は実際に「ケフ」と発音する言葉だったのです。
 その「ケフ」という発音は楽に発音すると「ケウ」になります。 「オハヨー」が「オアヨー」という感じになるのと同じでハ行はア行になりやすいのです。
 その「ケウ」を口を開けたまま(顎を閉じないで)発音すると「ケオ」のようになります。
 そしてその「ケオ」を早く言うと「キョー」になります。 

 このような理由で「ケフ」という発音は「キョー」に変化したのですが、しかしその「キョー」は長い間昔のまま「けふ」と書かれてきました。
 そして昭和時代になってから「現代仮名遣い」の決まりででそれを「きょう」と書くことにしたのです。
 歴史的仮名遣いは発音と関係のない変な書き方をしているわけではなく、大昔の発音と書き方がどうであったのかを示しているものなのです。


歴史的仮名遣いの基盤となる五十音図

   
   
   
 
                     
           
           
           
           
           

 (「ゐ」の片仮名は「ヰ」、「ゑ」の片仮名は「ヱ」。)


現代仮名遣いで生活している私たちも実は歴史的仮名遣いから全く離れてしまっているわけではありません。

 「こんにちは」と書いて「コンニチワ」と読んでいます。
 「〜原(はら)」を「ワラ」と読みます。(藤原、菅原、・・・)
 「羽、把」は「ハ」と読む漢字だと知りながら「一羽、一把」を「イチワ」と読んでいます。
 「8(はち)」を九九で「ワ」と読んだり、語呂合わせで「ワ」と読んだりします。
 「頬」は「ほお」でも「ほほ」でもどちらでもよい気がします。
 「不知火(しらぬい)」に「しらぬ」と振り仮名をつけたくなります。
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学校での試験問題の考え方 

 学校のテストや試験で出題されるのはほとんど「次の古文を現代仮名遣いに変えなさい。」という形式の問題です。
 この「現代仮名遣いに変える」とは

 「この古文を現代ではどのように発音して読むでしょうか。それを現代仮名遣いの書き方で表しなさい。」

 という意味です。
 発音通りの仮名を書くのではなく現代仮名遣いの決まりで書くこと、また古い語を現代語に変えたり分かりやすい言い方に変えたりするのではないことに注意して下さい。

 それでは読み方試験1(7級)を受けてみましょう。


 現代文の読み取り練習


例題と試験問題についての注意:

「現代仮名遣い」とはいわば現代語のための専用の仮名遣いですから、原則的には古文を現代仮名遣いで書くことはありません。
学校教育における「この歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに変えなさい」という設問の本来の意義は「歴史的仮名遣いを現代ではどう発音して読むでしょうか」であって、それを表記するのに発音記号を要求するわけにはいかないので、普段ふつうに使っている現代仮名遣いで書けと言っているのです。古文の「歴史的仮名遣い」が「現代仮名遣い」に置き換え可能であると誤解される設問の在り方には再考の余地があるでしょう。
「歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに変える」とは、古文の現代における読み方を示すための便宜的な作業であることを忘れてはなりません。

古文を現代仮名遣いで書くことの困難についてはこちらこちらを参照して下さい。




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