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法則のまとめと解説

法則のまとめ  法則の解説

このページは和語について述べたものです。

歴史的仮名遣ひ 法則のまとめ

が付いたものは大原則では捉へられないもの。)


語頭のワ、イ、ウ、エ、オについて

語頭の「ワ」と「ウ」はすべて「わ」と「う」。 A1

 解説 試問

語頭の「イ」はほとんど「い」。 A2

 解説 試問

語頭の「エ」はほとんど「え」。 A3

 解説 試問

語頭の「オ」はほとんど「お」。 A4

 解説 試問


語頭以外のワ、イ、ウ、エ、オについて

語頭以外の「ワ」は多くは「は」。 A5

 ★終助詞の「〜ワ」は「わ」。

 解説 試問

語頭以外の「イ」は多くは「ひ」。 A6

 ★形容詞語尾の「〜イ」はすべて「い」。

 ★動詞の「〜ナイ、タイ、マイ、ラシイ、ミタイ、ナサイ、クダサイ」はすべて「い」。

 ★動詞命令形語尾の「〜イ」はすべて「い」。

 ★動詞の音便形「〜イタ、イダ、イテ、イデ」は「い」。

 ★助詞の「〜イ」は「い」。

 ★元「や」行の動詞の「イ」は「い」。(老いる、悔いる、報いる この三個のみ

 ★イ段の音を引き延ばすための拍は「い」。

 解説 試問

語頭以外の「ウ」は多くは「ふ」。「ウ」で終る動詞の「ウ」はすべて「ふ」。 A7

 ★形容詞の活用の「〜く」が「ウ」となったものはすべて「う」。

 ★動詞(乞ふ、問ふ この二個のみ)の活用の「ひ」が「ウ」となったものは「う」。
 ★(文語では他の動詞でもすべて「う」。

 ★動詞の推量、意志を表はす「〜ウ」はすべて「う」。

 ★(文語のわ行動詞の「〜ウ」は「う」。植う、飢う、据う この三個のみ

 ★ウ段、オ段の音を引き延ばすための拍は「う」。

 解説 試問

語頭以外の「エ」は多くは「へ」。 A8

 ★元「や」行の動詞の「エ」は「え」。(二十七個の動詞)

 ★エ段の音を引き延ばすための拍は「え」。

 解説 試問

語頭以外の「オ」は多くは「ほ」。 A9

 ★動詞の推量、意思を表はす「〜オウ」はすべて「はう」。

 解説 試問


長音について

動詞の推量、意思を表はす「オ段+ウ」は「あ段+う」。 B1
★ただし「ヨウ」であるものはそのまま「よう」。

 解説 試問

それ以外にも「オ段+ウ」が「あ段+う、ふ」であるものがある。 B2

 ★語幹がア段で終る形容詞の「〜く」の変化「〜ウ」は「あ段+う」。

 解説 試問

「ウ段の拗音+ウ」は「い段+う、ふ」。 B3

 ★形容詞の「〜しく」の変化「シュウ」はすべて「しう」。

 解説 試問

「オ段の拗音+ウ」は「え段+う、ふ」。 B4

 解説 試問

★例外的に「オ段の拗音+ウ」が「あ段の拗音+う」であるものがある。 B5

 解説 試問


ジとズについて

「ジ」は多くは」「じ」。 C1

 解説 試問

「ズ」は多くは「づ」。 C2

 ★動詞の「〜する」が濁ったものはすべて「ず」。

 ★動詞の打消しの「〜ズ」は「ず」。

 解説 試問


 法則の把握度をもう一度弱点診断で確かめてみよう。

 暗記用シート





法則の

このページは和語について述べたものです。

が付いた法則は大原則では捉へられないもの。
○」は現存してゐない仮名を表す。

 

A 現代仮名遣ひの語頭の「ワ」と「ウ」は歴史的仮名遣ひでもすべて「わ」と「う」です。

 現在語頭で「ワ」と発音されてゐる音はすべて大昔から「ワ」と発音されてきました。ですから昔も今もすべて「わ」と書かれます。
 また、現在語頭で「ウ」と発音されてゐる音も昔から原則としてすべて「ウ」と発音されてきました。ですから昔も今もすべて「う」と書かれます。

 ただ、「う」については仮名文字発明はるか以前に、あ行の「う」とは別に、わ行の「う」といふべきものがあったと考へられるのですが、しかしその発音はあまりに「ウ」に似てゐたためにあ行の「う」と紛れてしまひ、結局わ行の「う」を表す文字はできませんでした。由来がわ行であっても「う」は「う」と書かれたのです。


A 語頭の「イ」はほとんど「い」ですが、「ゐ」である例外があります。

 現在語頭で「イ」と発音されてゐる音には3つの由来が考へられます。
 ・あ行の「い」は「イ」と発音されました。
 ・仮名文字発明はるか以前にあったと考へられるや行の「い」は、発音があまりに「イ」に似てゐたために「い」と紛れてしまひ、結局や行の「い」を表す文字はできず、由来がや行であってもあ行と同じ「い」と書かれました。
 ・わ行の「ゐ」は仮名文字発明当時は「ウィ」のやうな発音でした。しかしその後、唇を突き出す手間を省くやうになったために「イ」と発音されるやうになりました。

 ですから、現在の発音の語頭の「イ」には元々「い」と書かれたものと「ゐ」と書かれたものがあるのです。


A 語頭の「エ」はほとんど「え」ですが、「ゑ」である例外があります。

 現在の語頭の「エ」には3つの由来が考へられます。
 ・あ行の「え」の発音は元々「エ」でした。
 ・一方や行の「え」は元々は「イェ」のやうな発音でした。
 ところがこの二つは仮名文字が盛んに使はれるやうになる少し前に同じ発音になってしまったのです。ですから仮名も最初は「え」と「え」が書き分けられてゐたのですが、結局混用されるやうになってどちらの仮名も「え」と同じだといふことになりました。参照
 ・わ行の「ゑ」は仮名文字発明当時は「ウェ」のやうな発音でしたが、その後「え」と同じ発音になっていきました。

 ですから、現在の発音の語頭の「エ」には元々「え」と書かれたものと「ゑ」と書かれたものがあるのです。


A 語頭の「オ」はほとんど「お」ですが、「を」である例外があります。

 語頭の「オ」には基本的に2つの由来が考へられます。
 ・あ行の「お」の発音は元々「オ」でした。
 ・わ行の「を」は仮名文字発明当時は「ウォ」のやうな発音でした。
 ところがその後この二つは同じ発音になっていきました。

 ですから、現在の発音の語頭の「オ」には元々「お」と書かれたものと「を」と書かれたものがあるのです。

 なほ、語頭の「オー」の発音には元々「あふ」と書かれたものがあります。B2参照。


A 語頭以外の「ワ」は多くは「は」ですが、「わ」である例外があります。

 現在の語頭以外の「ワ」の発音の由来は2つです。
 ・「は」は仮名文字発明当時は「ファ」と発音されてゐましたが、その後、自然に楽な発音をするやうになっていったために語頭以外では「ワ」と発音されるやうになりました。(このやうに仮名がその置かれた位置、条件によって本来の音とは異なる音で発音されることを転呼と言ひます。)
 ・「わ」は一貫して「ワ」と発音されてきました。

 そこで現在の発音の語頭以外の「ワ」には元々「は」と書かれたものと「わ」と書かれたものがあるのです。


  ★終助詞の「ワ」は「わ」。

 「〜するわ」のやうに使はれる終助詞「わ」もその出自は普通の係助詞の「は」と同根です。しかしこの独特の用法としての助詞は室町時代から他の「は」とは区別して敢へて(新語として)「わ」と書かれてきました。室町時代は新語ではハ行転呼が起こらなくなった時代です。例へば新語である「あひる」は「アイル」とは読まれませんでした。この助詞も「は」と書いてしまったら「ワ」と読むのに抵抗を感じたものでせう。女性語の「わ」も同じです。


A 語頭以外の「イ」は多くは「ひ」ですが、「ゐ」「い」である例外があります。

 現在の語頭以外の「イ」の発音の由来は4つです。
 ・「ひ」は仮名文字発明当時は「フィ」と発音されてゐましたが、その後、自然に楽な発音をするやうになっていったために語頭以外では最終的に「イ」と発音されるやうになりました(転呼)。
 ・「ゐ」は仮名文字発明当時は「ウィ」のやうな発音でした。しかしその後発音が変化し、今では「イ」の発音になってゐます。
 ・古来の日本語には語頭以外にあ行の「い」が存在することはありませんでしたが、や行の「い」ならば存在しました。それはA2で述べたやうに「い」と書かれました。
 ・また、後に発生するイ音便(後述)なども「い」と書かれました。

 そこで現在の発音の語頭以外の「イ」には元々「ひ」と書かれたものと「ゐ」と書かれたものと「い」と書かれたものがあるのです。


  ★形容詞語尾の「イ」はすべて「い」。

 「赤し、赤き」などの意味で「赤イ」と言ふこと(イ音便)が平安時代に始まりました。しかしそれは「し」「き」といふ仮名が「イ」と発音されるやうになったためではなく、こなれた感じの語にするために意識的に従来とは違った新しい言ひ方を始めたものでした。ですから新しい言ひ方(音便)の表記は発音通り「〜い」としました。(従来通り「赤し、赤き」と書けば「アカシ、アカキ」と読みました。)


  ★動詞の「ナイ、タイ、マイ、ラシイ、ミタイ、ナサイ、クダサイ」はすべて「い」。

 前項と同じ事情です。「し」「じ」「き」「り」などの部分を「イ」の発音に替へた新しい言ひ方(音便)です。


  ★動詞命令形語尾の「イ」はすべて「い」。

 前項と同じ事情です。「よ」などの部分を「イ」の発音に替へた新しい言ひ方(音便)です。


  ★動詞の音便形「イタ、イダ、イテ、イデ」は「い」。

 前項と同じ事情です。「き」「ぎ」などの部分を「イ」の発音に替へた新しい言ひ方(音便)です。
  注:「ひ」はその文字自体が転呼で「イ」と発音されますので音便ではありません。「強ひる」の活用は「強ひた、強ひて」です。
  注:「ゐ」はその文字自体が「イ」と発音されます。音便ではありません。「率ゐる、用ゐる」の活用は「〜ゐた、〜ゐて」です。
     (文語には「用ひ」もあるので注意。)


  ★助詞の「イ」は「い」。

 前項と同じ事情です。「や」「よ」などの部分を「イ」の発音に替へた新しい言ひ方(音便)です。


  ★元「や」行の動詞の「イ」は「い」。(老いる、悔いる、報いる この三つのみ

 や行の活用は当然や行の仮名で書きます。や行の「い」はA2で述べたやうに「い」といふ仮名で書くしかありません。


  ★イ段の音を引き延ばすための拍は「い」。

 延ばす音には由来があるわけではありませんので発音に従ってあ行の仮名で書きます。


A 語頭以外の「ウ」は多くは「ふ」ですが、「う」である例外があります。

 現在の語頭以外の「ウ」の発音の由来は3つです。
 ・「ふ」は大昔も「フ」と発音されてゐましたが、仮名文字定着後、自然に楽な発音をするやうになっていったために語頭以外では「ウ」と発音されるやうになりました(転呼)。
 ・古来の日本語には語頭以外にあ行の「う」が存在することはありませんでしたが、わ行の「う」ならば存在しました。それはA1で述べたやうに「う」と書かれました。
 ・また、後に発生するウ音便なども「う」と書かれました。

 そこで現在の発音の語頭以外の「ウ」には元々「ふ」と書かれたものと「う」と書かれたものがあるのです。


  「ウ」で終る動詞の「ウ」はすべて「ふ」。

 古来の日本語には語頭以外にあ行の音が存在することはありませんでした。ですからあ行の「う」で終る動詞があるはずはありません。現在の発音で「ウ」で終る動詞はすべて仮名文字発明当時は「〜フ」と発音され「〜ふ」と書かれてゐたものです。(ただし後述のやうに文語にはわ行の「う」で終る動詞があります。)


  ★形容詞の活用の「く」が「ウ」となったものはすべて「う」。

 例へば「おそろしく」の意味で「オソロシウ」と言ふこと(ウ音便)が平安時代に始まりました。しかしそれは「く」といふ仮名が「ウ」と発音されるやうになったためではなく、こなれた感じの語にするために意識的に従来とは違った新しい言ひ方を始めたものでした。ですから新しい言ひ方(音便)の表記は発音通り「〜う」でした。(従来通り「おそろしく」と書けば「オソロシク」と読みました。)
 その後発音は「オソロシュー」となり、現代仮名遣ひでは「おそろしゅう」と書かれてゐます。


  ★動詞(乞(請)ふ、恋ふ、問ふ この三つのみ)の活用の「ひ」が「ウ」となったものは「う」。文語では他の動詞でもすべて「う」。

 前項と同じ事情です。「ひ」の部分を「ウ」の発音に替へた新しい言ひ方(音便)です。
 他の似た動詞(「負ふ、沿ふ」など)は現代標準語(いはゆる「共通語」)ではふつう(「負って、沿った」などと)促音便となるのですが、この三つだけは例外的にウ音便(のまま)なのです。古くさい語だからでせうか。

 文語ではこの種の「ひ」はすべて「追うて、沿うた、思うて、願うた」などと音便化します。また「永らへて」が「永らうて」、「仕へまつる」が「仕うまつる」などと、「へ」が「う」に音便化することもあります。(付録古典文法事項参照)


  ★動詞の推量、意志を表はす「ウ」はすべて「う」。

 前項と同じ事情です。「む」「ん」の部分を「ウ」の発音に替へた新しい言ひ方(音便)です。B1参照。


  文語のわ行動詞の「ウ」は「う」。(植う、飢う、据う この三個のみ

 わ行の活用は当然わ行の仮名で書きます。わ行の「う」はA1で述べたやうに「う」といふ仮名で書くしかありません。)


  ★ウ段、オ段の音を引き延ばすための拍は「う」。

 引き延ばす拍は由来があるわけではありませんので発音に従ってあ行の仮名で書きます。

 オ段の音を引き延ばすのに「お」ではなく「う」と書く理由について:
  引き延ばす拍には本来は前の拍と同じ段の仮名を使ふのが自然なはずです。
  例:ああ、きい、すう、てえ、のお など。
 このうち「い」「う」の仮名は従来より漢字音の表記や音便として、また「え」は「や行」の「え」として語頭以外にも存在したものですから問題ありませんが、「あ」と「お」は原則として語頭以外には存在しない性格のものであったため、納まりの悪いものとなってしまひます。
 そこでどうしたかといふと、まづア段については、結局他に選択はありませんから「あ」を使はざるを得ませんでした。
 オ段については、幸ひ「お段の仮名+う」の表記が転呼によりオ段の長音として発音されるといふ現実がありましたので、自然にそれと同じ「う」を使ふことになりました。


A 語頭以外の「エ」は多くは「へ」ですが、「え」「ゑ」である例外があります。

 現在の語頭以外の「エ」の発音の由来は3つです。
 ・「へ」は元は「フェ」と発音されてゐましたが、その後語頭以外では最終的に「エ」と発音されるやうになりました(転呼)。
 ・古来の日本語では語頭以外にあ行の「え」が存在することはありませんでしたが、や行の「え」ならば存在しました。それはA3で述べたやうに「え」と書かれました。
 ・「ゑ」は仮名文字発明当時は「ウェ」のやうな発音でした。しかしその後発音が変化し、今では「エ」の発音になってゐます。

 そこで現在の発音の語頭以外の「エ」には元々「へ」と書かれたものと「え」と書かれたものと「ゑ」と書かれたものがあるのです。


  ★元「や」行の動詞の「エ」は「え」。(二十七個の動詞)

 や行の活用は当然や行の仮名で書きます。や行の「え」はA3で述べたやうに「え」といふ仮名で書きます。


  ★エ段の音を引き延ばすための拍は「え」。

 延ばす音には由来があるわけではありませんので発音に従ってあ行の仮名で書きます。
  注:「せ(背)」を引き延ばした「せい」は例外です。


A 語頭以外の「オ」は多くは「ほ」ですが、「を」「ふ」である例外があります。

 現在の語頭以外の「オ」の発音の基本的な由来は2つです。
 ・「ほ」は仮名文字発明当時は「フォ」と発音されてゐましたが、その後、自然に楽な発音をするやうになっていったために語頭以外では最終的に「オ」と発音されるやうになりました(転呼)。
 ・「を」は仮名文字発明当時は「ウォ」のやうな発音でした。しかしその後発音が変化し、今では「オ」の発音になってゐます。
 なほ、古来の日本語では語頭以外にあ行の「お」が存在することはありませんでした。

 そこで現在の発音の語頭以外の「オ」には元々「ほ」と書かれたものと「を」と書かれたものがあるのです。

 「ふ」であるものは特殊な例外です。「あふ(扇)ぐ」「たふ(倒)す」などは他の例に倣へば転呼の末に「オーグ」「トース」となるはずが現実には「アオグ」「タオス」と発音されてゐるものです。B2参照。


  ★動詞の推量、意思を表はす「オウ」はすべて「はう」。

 は行活用の動詞の推量、意思形は「〜はむ」ですが、やがて「〜はう」になります(音便)。この発音は「〜ワウ」から更に「〜オー」となって(転呼)現在に至り、現代仮名遣ひでは「〜おう」と書かれてゐます。
 B1参照。


B ★動詞の推量、意思を表はす「オ段+ウ」は「あ段+う」と書きます。

 例へば「行かむ」といふ意味で「イカウ」と言ひ、「行かう」と書く現象(音便)がありましたが、この「かう」の部分の発音は口の動きを少なくすることによって次第に「カー」と「コー」の中間のやうな発音(便宜的に「カォー」のやうに示す)に変はっていき、終には完全に「コー」となりました(転呼)。現代仮名遣ひでは「こう」と書いて「コー」と読んでゐます。

 このやうに、現代仮名遣ひで書く推量、意志の「お段+う」はすべて元々「あ段+う」で表記されてゐたものです。


  ただし「ヨウ」であるものはそのまま「よう」です。

 例へば「セム(せむ)」が「セウ」(音便)→「ショー」(転呼)のやうに変化して「よう」といふ助動詞が生まれました。その結果「見よう」「来よう」などもできました。


B2 それ以外にも「オ段+ウ」を「あ段+う、ふ」と書くものがあります。

 「あう」「あふ」や「かう」「かふ」、「さう」「さふ」などの表記はみな最初はそれぞれ「アウ」「アフ」、「カウ」「カフ」、「サウ」「サフ」と文字通りに発音されてゐましたが、その後「アフ」「カフ」「サフ」は「アウ」「カウ」「サウ」に合流し(ハ行転呼)、さらに「アウ」「カウ」「サウ」はそれぞれ「アーとオーの中間」「カーとコーの中間」「サーとソーの中間」の発音に変はり、更にそれぞれ「オー」「コー」「ソー」まで変化しました(長音化転呼)。ただし、動詞の「会ふ」「買ふ」・・・の類は現代標準語(いはゆる「共通語」)では「アウ」「カウ」・・・と発音されます。

 したがって、現在のオ段を延ばす発音の中には元々「あ段+う(ふ)」と書かれてゐたものが多くあるのです。


  ★語幹がア段で終る形容詞の「〜く」の変化「〜ウ」は「あ段+う」。

 A7で述べたやうに、「く」の部分を「ウ」の発音に替へた新しい言ひ方(音便)です。例へば「あたたかく」の音便形は「あたたかう」と書かれましたが、発音は「アタタカウ」からその後「アタタコー」に変化しました(転呼)。


B ★「ウ段の拗音+ウ」は「い段+う、ふ」と書きます。

 例へば「きう」の表記は速く発音すると「キュー」となりやすいものです。「い段+う(ふ)」の表記の発音はそのやうに変はってきました(転呼)。


  ★形容詞の「しく」の変化はすべて「しう」。

 A7で述べたやうに、「く」の部分を「ウ」の発音に替へた新しい言ひ方(音便)です。


B ★「オ段の拗音+ウ」は「え段+う、ふ」と書きます。

 例へば「せう」の表記の発音はあいまいな「セオ」を経由して「ショー」となりやすいものです。「え段+う(ふ)」の表記の発音はそのやうに変はってきました(転呼)。


B 例外的に「オ段の拗音+ウ」を「あ段の拗音+う」と書くものがあります。

 一例を上げると、現代仮名遣ひでは「し様(よう)がない」の縮約形は「しょうがない」ですが、歴史的仮名遣ひでは「し様(やう)がない」ですから、縮約形は「しゃうがない」とするしかありません。(拗音を大字(並字)表記すれば問題は見えなくなります。)


C ジ」は多くは」「じ」ですが、「ぢ」である例外があります。

 原理的には「じ」は元々「zi」、「ぢ」は元々「di」のやうな発音であったと考へられます。仮名文字発明当時にはこの違ひがあったためにきちんと書き分けられてゐました。後世、「である」の意味の「ぢゃ」が発生した頃も発音に違ひがありましたから「じゃ」と書くことは考へられませんでした。その後両者の発音は混同され始め、いまではまったく同じになってゐます。


C ズ」は多くは「づ」ですが、「ず」である例外があります。

 原理的には「ず」は元々「zu」、「づ」は元々「du」のやうな発音であったと考へられます。仮名文字発明当時にはこの違ひがあったためにきちんと書き分けられてゐましたが、その後発音は混同され始め、いまではまったく同じになってゐます。


  ★動詞の「する」が濁ったものはすべて「ず」。

 古来、日本語では清音と濁音の類縁関係は非常に強いものでした。「する」の意味があるのですから当然「ずる」でなければなりません。


  ★動詞の打消しの「ズ」は「ず」。

 古語動詞「す」と、打ち消す助動詞「ず」は清濁を契機として反対関係にあると理解できます。



用語について

転呼」は語が変化したものではなく発音の習慣の自然変化であり、表記には関はらないものです。(発音の変化について詳しいことは転呼のメカニズム参照)
これに対して「音便」は文字の発音習慣の変化ではなく別の語形の誕生(創作)であり、当然表記に関はります。
発音の変化と表記の関係については
歴史的仮名遣ひの原理を参照して下さい。


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