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歴史的仮名遣いの手引き

和語 漢字音 外来語 小字(小書き) 踊り字 「ん」と「む」 長音の短縮 古語 仮名の字種 漢字の字体 文体 読み方 疑問仮名遣

仮名遣切替 7-10版


語について  (漢語、漢字音についてはこちら

目次

現代仮名遣い 歴史的仮名遣い
語頭 語中・語尾
A1 A5
A2 A6
A1 A7
A3 A8
A4 A9
オウ、コウ、ソウ、トウ、・・・ B1B2
キュウ、シュウ、チュウ、・・・ B3
キョウ、ショウ、チョウ、・・・ B4B5
ジ、ジャ、ジュ、ジョ C1
C2
上記以外 現代仮名遣いと同じ

 「歴史的仮名遣い」とは広い意味では漢語の仮名遣い(字音仮名遣い)をも含みますが、狭い意味では和語の仮名遣いのことだけを言います。
 ここでは現代語の和語について、歴史的仮名遣いが現代仮名遣いと異なるところを包括的に記述しました。
 複数説のある語については有力な説を採用し、異説については必ずしも触れているとは限りません。
 なお、漢語は対象外ですが準和語(漢語由来の意識が薄れている語)については、一部必要と思われるものは記載しました。それらについては
字音仮名遣いを適用しています。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

まず最初に全体の見通しを立てておきましょう。 

和語を歴史的仮名遣いで書くときは、現代仮名遣いで

 「ワ」「イ」「ウ」「エ」「オ」

 「オウ」「コウ」「ソウ」・・・

 「キュウ」「シュウ」「チュウ」・・・

 「キョウ」「ショウ」「チョウ」・・・

 「ジ」「ジャ」「ジュ」「ジョ」「ズ」

 と書く部分だけが問題となります。(それ以外の部分は仮名遣いに関係しません。参考

 そこでそれらを概略次のように記述していきます。

A.「ワ、イ、ウ、エ、オ」について。
   現代仮名遣いの語頭の「イ、エ、オ」が「ゐ、ゑ、を」となるもの。
   語頭以外の「ワ、イ、ウ、エ、オ」が「は、ひ、ふ、へ、ほ」以外となるもの。
    (「は、ひ、ふ、へ、ほ」となるものが非常に多いのでそれを原則とし、例外を覚える。)

B.長音について。
   「オウ、コウ、ソウ、・・・」が「あう、あふ、かう、かふ、さう、さふ、・・・」となるもの。
   「キュウ、シュウ、チュウ、・・・」が「きう、きふ、しう、しふ、・・・」となるもの。
   「キョウ、ショウ、チョウ、・・・」が「けう、けふ、せう、せふ、てう、てふ、・・・」となるもの。

C.「ジ、ズ」について。
   「ジ」が「ぢ」となるもの。
   「ズ」が「ず」となるもの。
    (「づ」となるものが多いのでそれを原則とし、例外の「ず」を覚える。)

 以下、順次説明していきますが、説明文中「 」内のカタカナは現代仮名遣いについて、「 」内のひらがなは歴史的仮名遣いについて言及しているものです。

 赤字で示したのは覚えるべき法則です。が付いた法則は大原則では捉えられないものです。)
 
法則について詳しいことは各項目末尾にある「法則の解説」で参照できます。

 例外や覚えるべき語として挙げた語群は通常の現代文を書くための十分なリストです。語は現代仮名遣いにしたときの五十音順に配列してあります。これらは各項目末尾にある「語の由来」で仮名遣いの根拠を知ることができます。(「語の由来」を有効的に利用するには「仮名遣いを推定する方法」をお読み下さい。)

 法則や例外の語などの暗記には「暗記用シート」が利用できます。

 歴史的仮名遣いでは促音の「つ」と拗音の「や、ゆ、よ」を小さく書くという決まりはありません。このサイトでは語の説明の明確性を確保するためにしばらくは小さく書きます。

 

和語について
以下本文


A 「ワ、イ、ウ、エ、オ」について

 まず語頭について

A 現代仮名遣いの語頭の「ワ」と「ウ」は歴史的仮名遣いでもすべて「わ」と「う」。

 (「語頭」の意味について。例えば「ヒマワリ」の「ワ」は語中ですが「ヤクワリ」の「ワ」は語頭と考えます
 ので「やくわり」となります。「シワザ しわざ」「ミウチ みうち」なども同様に理解します。)

  法則の解説


A 語頭の「イ」はほとんど「い」ですが、「ゐ」である例外は次の通りです。

  井  藺草  居丈高  田舎  猪 亥  威張る  ヰモリ  居る

  (「イラッシャル、イラッシタ、イラシタ、イラシテ」などは「い」でよい。由来は「入る 入らせらる」。)

  (文語「在す(坐す)」は「います」。「居(ゐ)ます」とは別の語。)

  法則の解説  語の由来


A 語頭の「エ」はほとんど「え」ですが、「ゑ」である例外は次の通りです。

  絵  描く  ゑぐい  抉る  餌  笑み 笑む  ヱンジュ

  (「酔ウ」は「よふ」。「ゑふ」は古形。)

  法則の解説  語の由来


A 語頭の「オ」はほとんど「お」ですが、例外は次の通りです。

  「を」であるもの。

   小  尾  緒  甥(をひ)  終へる  雄々(をを)しい  丘 岡  可笑しい

   犯す  拝む  荻  桶  をこがましい  ヲコゼ  長  をさをさ  幼い

   収める 納 治 修  叔父 伯父(をぢ)  惜しい  教へる  をぢさん

   ヲシドリ  雄 牡  教はる  夫  男  一昨日(をととひ)  一昨年

   少女(をとめ)  囮  踊る  斧  をののく  叔母 伯母 をばさん  ヲミナヘシ

   檻  折  折る  居る  ヲロチ  終はる  女

  「オウ」の「オ」が「あ」であるもの。

   あふぎ 扇  あふせ 逢瀬  あふみ 近江  あをみ 青海  あをめ 青梅

  法則の解説  語の由来


 次に語頭以外について

A 語頭以外の「ワ」は多くは「は」ですが、「わ」である例外は次の通りです。

  ★終助詞の「ワ」は「わ」。(係助詞「は」とは別)

   〜だわ  〜わい  〜わね  寝坊するわ忘れ物するわ  出るわ出るわ  など

  その他「わ」であるもの。

   あわ 泡  あわただしい あわてる 慌  いわう 硫黄  いわし 鰯

   うわる 植  かわく 乾 渇  くつわ 轡  くるわ 廓  くわゐ 慈姑

   ことわざ 諺  ことわる 断  こわいろ 声色  さわぐ 騒  ざわざわ

   ざわめく  しわ 皺  すわる 座  すわる 据  たわいない 他愛無

   たわむ 撓 たわわ  はにわ 埴輪  よわい 弱

  法則の解説  語の由来


A 語頭以外の「イ」は多くは「ひ」ですが、例外は次の通りです。

  ★形容詞語尾の「イ」はすべて「い」。(イ音便。由来は「し」「き」)

   赤い  いい  美しい  など

  ★動詞の「ナイ、タイ、マイ、ラシイ、ミタイ、ナサイ、クダサイ」はすべて「い」。
   (イ音便。由来は「し」「じ」「き」「り」など)

   行かない  行きたい  行きなさい  行くまい  行くみたい  行くらしい

   行ってください  など

  ★動詞命令形語尾の「イ」はすべて「い」。(イ音便。由来は「よ」)

   来い  せい  立てい  など

  ★動詞の音便形「イタ、イダ、イテ、イデ」は「い」。(イ音便。由来は「き」「ぎ」)

   稼いだ  咲いたら  着いて  脱いでも  など

(「強ひた」、「率ゐた」は音便ではない。)

  ★助詞の「イ」は「い」。(イ音便。由来は「や」「よ」)

   かい  だい  わい  など

  ★元「や」行の動詞の「イ」は「い」。(由来はや行の「い」)

   老いた  悔いて  報いよ  などこの三個の動詞のみ語の由来

  ★イ段の音を引き延ばすための拍は「い」。

   しいんと など

  その他「い」であるもの。(イ音便、付加音、感動詞、や行の「い」など。 語頭以外に元々
   あ行の「い」であるものはない。)

   あいつ  あいにく 生憎  あるいは  いいえ  いっぱい  えい(掛け声)

   老い 老いらく 老いる  おい(呼びかけ)  おいしい 美味  おいて 於

   おいで  おいら 俺等  おほいに 大  かい 櫂  かいくぐる 掻潜

   かいぞへ 介添  かいだす 掻出  かいまき 掻巻  かいまみる 垣間見

   かはいい 可愛  かはいさう 可哀想  悔い  〜ください  来い  こいつ

   ここいら  〜ございます  さいなむ 苛  さいはひ 幸  ぢいさん 爺

   〜しゃい  しんまい  ずいき 芋茎  ずいと  ずいぶん  すいません

   せい 背  せいいっぱい  せいぜい  ぜんまい  そいつ  そこいら

   たいした  だいぶ 大分  たいまつ 松明  たわい 他愛  つい(うっかり)

   つい 対  ついぢ 築地  ついたち 一日  ついたて 衝立  〜について

   ついで 次  ついで 序  ついばむ 啄  〜っしゃい  どいつ

   たうてい 到底  ないがしろ 蔑  〜なさい  にいさん 兄  はい(返事)

   ひいき 贔屓  ひいでる 秀  ふい(駄目)  ふいご 鞴  へい(はい)

   ほいほい  まいにち 毎日  むいか 六日  むくい 報  やい(呼びかけ)

   やいのやいの  やいば 刃  わいわい  わっしょい

  次のものは「ゐ」です。

   あゐ 藍  あぢさゐ 紫陽花  いぬゐ 乾  くらゐ 位  〜ぐらゐ

   くれなゐ 紅  くわゐ 慈姑  しほさゐ 潮騒  しきゐ 敷居 閾

   しばゐ 芝居  せゐ(所為)  とりゐ 鳥居  ひきゐる 率  まゐる 参

   もちゐる 用  もとゐ 基

  法則の解説  語の由来


A 語頭以外の「ウ」は多くは「ふ」(「ウ」で終る動詞の「ウ」はすべて「ふ」)ですが、
   例外は次の通りです。   

  ★形容詞の活用の「く」が「ウ」となったものはすべて「う」。(ウ音便。由来は「く」)

   おそろしう  寒う  おたか(高)う  など

  ★動詞(乞ふ、恋ふ、問ふ この三個のみ)の活用の「ひ」が「ウ」となったものは「う」。
    (ウ音便。由来は「ひ」)

   乞(請)うて  恋うて  問うた  など

   文語では他の動詞でもすべて「う」。  言うて 追うて 沿うて  など)

  ★動詞の推量、意志を表わす「ウ」はすべて「う」。(ウ音便。由来は「む」「ん」)

   行かう  笑はう  見よう  など (詳しくはB1参照。)

  文語の「わ」行動詞の「ウ」は「う」。(由来はわ行の「う」)

   (植う 植うる  飢う 飢うれば  据う 据うれど  などこの三個の動詞のみ)
   語の由来

  ★ウ段、オ段の音を引き延ばすための拍は「う」。

   すうっと  どうれ  など

  その他「う」であるもの。(ウ音便、付加音、感動詞、わ行の「う」など。 語頭以外に元々
   あ行の「う」であるものはない。)

   あはう 阿呆  ありがたう  いわう 硫黄 (「ゆわう」は古形)  いちゃう 銀杏

   いもうと 妹  〜うる 得  おとうさん 父  おとうと 弟  おはやう  おめでたう

   かりうど 狩人  〜からう  からうじて 辛  かはいさう 可哀想

   ききゃう 桔梗  きうり 胡瓜  くろうと 玄人  かう(〜だ、いふ、する、なる)

   かうがうしい 神々  かうし 格子  こうぢ 小路  かうぢ 麹  かうぞ 楮

   かうばしい 香  かうべ 頭  かうべ 神戸  かうむる 被  かうもり 蝙蝠

   かうり 行李  ごきげんよう  ごちそうさま  さやうなら  〜ぢゅう 中

   しうと 舅  しうとめ 姑  しゃうが 生姜  しゃうがない  しゃうぶ 菖蒲

   しろうと 素人  さう(〜だ、いふ、する、なる)  〜さう(〜だ、な)

   さうざうしい 騒々  さうらふ 候  たたう 畳  〜たらう  〜だらう

   てうづ 手水  ちゃうど 丁度  てうな 手斧  〜でせう  どう 如何

   たうげ 峠  とうさん 父  どうせ  どうぞ  たうてい 到底  たうとう 到頭

   とうに(早くに)  どうも  だうりで 道理  どぢゃう 泥鰌  なかうど 仲人

   のうのう  ひうが 日向  ヘウ 豹  ふつう 普通  ぶだう 葡萄  〜はう 方

   はうき 箒  はうむる 葬  ほんたう 本当  〜ませう  めうが 茗荷

   めうと(ミョートと読む場合) 夫婦  もう(既に)  もう[または まう](更に)

   まうける 設 儲  まうす 申 (「まをす」は古形)  まうでる 詣  やう(〜だ、な)

   やうか 八日  ようこそ  やうす 様子  やうやく 漸  りんだう 竜胆

   わかうど 若人  われもかう 吾木香

  特殊なもの。

   あかほ 赤穂  あをみ 青海  あをめ 青梅

  法則の解説  語の由来


A 語頭以外の「エ」は多くは「へ」ですが、例外は次の通りです。

  ★元「や」行の動詞の「エ」は「え」。(由来はや行の「え」)

   あまえる 甘  いえる 癒  おびえる 脅  おぼえる 覚  きえる 消

   きこえる 聞  こえる 越  こえる 肥  こごえる 凍  さえる 冴

   さかえる 栄  すえる 饐  そびえる 聳  たえる 絶  つひえる 費 潰

   なえる 萎  にえる 煮  はえる 生  はえる 映 栄  ひえる 冷

   ふえる 増  ほえる 吠  まみえる 見  みえる 見  もえる 燃  もえる 萌 

   もだえる 悶  以上二十七個の動詞のみ語の由来

  ★エ段の音を引き延ばすための拍は「え」。

   あれえ  せえの  など

  その他「え」であるもの。(付加音、感動詞、や行の「え」など。 語頭以外に元々あ行の「え」で
   あるものはない。)

   あえか  あまえ 甘  いいえ  いりえ 入江  〜え(人名の江、枝)

   ええ(応諾)  おびえ 脅  おぼえ 覚  きこえ 聞  こえ 肥  こごえ 凍

   こころえ(る) 心得  さえぎる 遮  さえ 冴  さかえ 栄  サザエ

   たえだえ 絶々  つひえ 費  つくえ 机  なえ 萎  にえ 煮  ぬえ 鵺

   ねえ(呼びかけ)  ねえさん 姉  はえ 栄  ひえ 稗  ひえ 冷  ふえ 笛

   へえ(はい)  みえ 見栄  もだえ 悶

  「ゑ」であるもの。

   いしずゑ 礎  うゑる 植  うゑる 飢  〜ゑ(人名の恵)  こゑ 声

   こずゑ 梢  すゑ 末  すゑる 据  つゑ 杖  ともゑ 巴  ほほゑむ 微笑

   ゆゑ 故  ゆゑん 所以

  法則の解説  語の由来


A 語頭以外の「オ」は多くは「ほ」ですが、例外は次の通りです。

  「お」であるもの。(語中のように見えて実は語頭であるもの。 語頭以外に元々「お」であるも
   のはない。)

   はおり はおる 羽織

  「を」であるもの。

   あを 青  いさを 功  うを 魚  〜を(人名の男、雄、夫)

   かをり かをる 香  かつを 鰹  さを 竿  しをらしい  しをり 栞

   しをれる 萎  たをやか  たをやめ 手弱女  たをる 手折  とを 十

   ますらを 益荒男  みを 澪  みさを 操  めをと 夫婦  やをら

  「ふ」であるもの。

   あふひ 葵  あふぐ 扇 仰  あふむく 仰向  あふる 煽

   たふす たふれる 倒

  ★動詞の推量、意思を表わす「オウ」はすべて「はう」。(由来は「は行動詞未然形+む」)

   会はう  言はう  買はう  などすべて

  「オウ」が「わう」であるもの。

   いわう 硫黄 (「ゆわう」は古形)

  法則の解説  語の由来


B 長音(「オウ、コウ、ソウ、・・・、キュウ、シュウ、チュウ、・・・、キョウ、ショウ、チョウ、・・・」)について

 (ここでは漢語の仮名遣いについては記述してありませんから注意してください。)

B ★動詞の推量、意思を表わす「オ段+ウ」は「あ段+う」です。(由来は「あ段+
     む」)
   ただし「ヨウ」であるものはそのまま「よう」です。(由来は「え段+む」)

   いはう 言  いかう 行  しなう 死  すまう 住  たたう 立  ちらう 散

   しよう  みよう 見  あけよう 開  など

  法則の解説  語の由来


B2 ★それ以外にも「オ段+ウ」が「あ段+う、ふ」であるものがあります。

  「オウ」の「オ」が「あ」であるもの。

   あふぎ 扇  あふせ 逢瀬  あふみ 近江

   (特殊なもの あをみ 青海  あをめ 青梅)

  「オウ」の「オ」が「わ」であるもの。

   いわう 硫黄 (「ゆわう」は古形)

  「コウ」の「コ」が「か」であるもの。

   (特殊なもの あかほ 赤穂)  かう(〜だ、いふ、する、なる)  かうがうしい 神々

   かうし 格子  かうぢ 麹  かうぞ 楮  かうばしい 香  かうべ 頭

   かうべ 神戸  かうむる 被  かうもり 蝙蝠  かうり 行李  なかうど 仲人

   むかふ[または むかう](名詞) 向  わかうど 若人  われもかう 吾木香

  「ゴウ」の「ゴ」が「が」であるもの。

   まがふ 紛 みまがふ 見紛

  「ソウ」の「ソ」が「さ」であるもの。

   かはいさう 可哀想  さう(〜だ、いふ、する、なる)  〜さう(〜だ、な)

   さうざうしい 騒々  さうらふ 候

  「トウ」の「ト」が「た」であるもの。

   ありがたう  おめでたう  たたう 畳  たゆたふ 揺蕩  たうげ 峠

   たうてい 到底  たふとい たふとぶ 尊  たうとう 到頭  とほたふみ 遠江

   ふきのたう 蕗の薹  ほんたう 本当

  「ドウ」の「ド」が「だ」であるもの。

   だうりで 道理  ぶだう 葡萄  りんだう 竜胆

  「ホウ」の「ホ」が「は」であるもの。

   あはう 阿呆  〜はう 方  はうき 箒  はふはふの体  はうむる 葬

   はふる 放

  「モウ」の「モ」が「ま」であるもの。

   すまふ 相撲  〜たまふ 給  まうける 設 儲

   まうす 申 (「まをす」は古形)  まうでる 詣

  「ヨウ」の「ヨ」が「や」であるもの。

   おはやう  さやうなら  やう 様  やうか 八日  やうす 様子  やうやく 漸

  「ロウ」の「ロ」が「ら」であるもの。

   〜からう  からうじて 辛  さうらふ 候  〜たらう  〜だらう

  その他に★語幹がア段で終る形容詞の「〜く」の変化「〜ウ」は「あ段+う」。

   あたたかう 温  おたかう 高  つめたう 冷  など

  法則の解説  語の由来


B ★「ウ段の拗音+ウ」は「い段+う、ふ」です。

  「キュウ」の「キュ」が「き」であるもの。

   きうり 胡瓜

  「シュウ」の「シュ」が「し」であるもの。

   ★形容詞の「しく」の変化はすべて「しう」。(ウ音便。由来は「く」)

    美しう  嬉しう  悲しう  など

   他に「しう」であるもの。

    しうと 舅  しうとめ 姑

  「ジュウ」の「ジュ」が「じ」であるもの。

   じふ 十

  「チュウ」の「チュ」が「ち」であるもの。

   〜ちふ(と言ふ)

  「ニュウ」の「ニュ」が「に」であるもの。

   はにふ 埴生

  「ヒュウ」の「ヒュ」が「ひ」であるもの。

   ひうが 日向

  「リュウ」の「リュ」が「り」であるもの。

   かりうど 狩人

  法則の解説  語の由来


B ★「オ段の拗音+ウ」は「え段+う、ふ」です。

  「キョウ」の「キョ」が「け」であるもの。

   けふ 今日

  「ショウ」の「ショ」が「せ」であるもの。

   〜でせう  〜ませう

  「チョウ」の「チョ」が「て」であるもの。

   てふ 蝶  てうづ 手水  てふちょ てふてふ 蝶々  てうな 手斧

  「ヒョウ」の「ヒョ」が「へ」であるもの。

   ヘウ 豹  ヘウタン 瓢箪

  「ミョウ」の「ミョ」が「め」であるもの。

   めうが 茗荷  めうと 夫婦

  (「ゑふ 酔」は古形。現代語は「よふ」。)

  B5も参照。

  法則の解説  語の由来


B 例外的に「オ段の拗音+ウ」が「あ段の拗音+う」であるものがあります。
     (漢語由来。本来の歴史的仮名遣いではなく、字音仮名遣いに由来するもの。)

  「キョウ」の「キョ」が「きゃ」であるもの。

   ききゃう 桔梗

  「ショウ」の「ショ」が「しゃ」であるもの。

   しゃうが 生姜  しゃうがない  しゃうぶ 菖蒲

  「ジョウ」の「ジョ」が「ぢゃ」であるもの。

   どぢゃう 泥鰌

  「チョウ」の「チョ」が「ちゃ」であるもの。

   いちゃう 銀杏  ちゃうど 丁度

  法則の解説  語の由来


C 「ジ、ズ」について

C ジ」は多くは「じ」ですが、「ぢ」である例外は次の通りです。

   味  鯵  あぢきない  アヂサヰ  意地  いぢいぢ  いぢめる  いぢらしい

   いぢる  氏  うぢうぢ  お爺(ぢい)さん  をぢさん  怖ぢる  舵  梶

   鍛冶  鯨  けぢめ  かうぢ(麹)  地  痔  〜路  爺(ぢい)さん

   ぢか ぢき(直)  ぢぢ(爺)  地味  シメヂ  ぢゃ ぢゃあ(では)

   〜ぢゃ(だ、では)  〜ぢゃふ(でしまふ)  〜ぢゅう(中)  重々(ぢゅうぢゅう)

   筋  たぢたぢ  たぢろぐ  築地(ついぢ)  どぢ  泥鰌(どぢゃう)  閉ぢる

   ナメクヂ  汝  ネヂ  ねぢる  恥  肘  藤  もぢもぢ  捩(もぢ)る

   紅葉  よぢる  ワラヂ

  法則の解説  語の由来


C ズ」は多くは「づ」ですが、「ず」である例外は次の通りです。

  ★動詞の「する」が濁ったものはすべて「ず」。

   案ずる 演ずる 感ずる 映ずる 応ずる 講ずる など

   甘んずる 疎んずる など

  ★動詞の打消しの「ズ」は「ず」。

   書かず 見ず など

  その他「ず」であるもの。

   杏子  礎(いしずゑ)  うずうず  うずくまる  数  必ず  傷  葛

   梢(こずゑ)  芋茎(ずいき)  ずいと  ずいぶん  鈴  錫  鱸  涼しい

   スズシロ  スズナ  雀  硯  ずっこける  ずっしり  ずっと  ずば抜ける

   ずばり  ずぶの  ずぶずぶ  ずぶぬれ  ずぼら  ずらす  ずらり

   ずり落ちる  ずるい  ずるずる  ずれる  ずんぐり  ずんずん  たたずむ

   鼠  筈  引きずる  ミミズ  むずむず  百舌  行きずり  柚子

  法則の解説  語の由来


以上和語について

 掲出した語群は当サイト作成のオリジナル資料です。個々の語の引用は自由ですが項目丸ごとの無断転載を禁じます。
 特殊な語、あまり使われない語は省略しました。さらに完璧を期すには「
総合辞書(歴史的仮名遣い辞典)」を参照してください。収録語数は約二倍です。

★ここまでのおさらいを「法則のまとめ」でやってみましょう。

★暗記とチェックは暗記用シートで。

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 和語以外の語種(漢語・準和語・外来語)については以下をごらん下さい。


 字音(漢語の仮名遣い、字音仮名遣い)について

 漢字音の表記は厳密な意味では歴史的仮名遣いとは別の問題です。
 しかし、和語の歴史的仮名遣いとの釣合いをとるために(どちらも「元々の発音に従った書き方」であるという体裁にするために)漢字音の表記には「字音仮名遣い」を使用するのがふつうです。「字音仮名遣い」とは個々の漢字の原語音を仮名で書き分けたらどうなるかと考えて江戸時代に決められたものです。ふつうは漢語は漢字で表記しますので字音仮名遣い表をまとめて覚える必要は全くありません。

 ただ、字音仮名遣いでは

 「カ・・」「ガ・・」「コー」「ゴー」

 と読む漢字のうちに「くゎ・・」「ぐゎ・・」「くゎう」「ぐゎう」と書く特徴的なものがあります。これが仮名書きの際の盲点となることもありますので覚えておきましょう。
 仮名で書くことのありそうな例を挙げておきます。

  火  アンクヮ
  菓  おくゎし
  嘩  けんくゎ
  画  マングヮ
  快  ゆくゎい
  外  あんぐゎい
  郭  クヮクコウ
  罐  やくゎん
  頑  グヮンコ

  など (実際にはふつう大字(並字)で「くわ」「クワ」「ぐわ」「グワ」と書かれます。)

これらはすべて「カ」「ガ」と読みます。現代において「クヮ」「グヮ」と読むことはありません。それは「わたしは」を「watashiha」と読むようなものだからです。

 

 なお、字音仮名遣いについては様々な考え方があります。その性格は元々外国語発音の写し、いわば発音記号であるのだから、現代においては現代の発音の写しでよいはずだとする立場もその一つです。ゴエテが正しい、ギョエテが正しい、というのはあまり意味がなく、今は皆ゲーテと言っているのだからゲーテでいいのだという考え方です。
 しかし字音仮名遣いを全く無視しようとすれば、元は漢語でありながら和語と同じように意識されている「はう(方)」「やう(様)」など準和語と呼ばれる若干の語の扱いをどうするかという問題が生じることになります。


 来語について

 外来語の表記も歴史的仮名遣いとは別の問題です。流布表記に従ってよいでしょう。
 なお、原語の発音や表記に拠って

 di、du などを  ラヂオ  ヅック
 m を  ラムプ  オリムピック

 のように書く工夫は任意で行われますが規範的というわけではありません。

 wi、we、wo などを  ウスキー  スヰッチ   スウーデン  ウーター

 のように書くこともありますが、これも任意的なもので規範ではありません。

 なお、ヰスキー、ヱートレス、ヲーターなどのように「ヰ、ヱ、ヲ」をそれぞれ単独で「ウィ、ウェ、ウォ」と読ませるのは基本的には間違いです。「ヰ、ヱ、ヲ」の現代における読みはあくまで「イ、エ、オ」です。


 字(小書き)について

 歴史的仮名遣いおよび字音仮名遣いでは、現代仮名遣いにおける拗音、促音の「や、ゆ、よ、つ」のように小さく書く決まりになっている字はありません。ふつうはどの字も同じ大きさ(並字)で書きます。しかし分かりやすくするために小さく書くことは間違いではありません。仮名文字をどんな大きさで書くかは仮名遣いとは別範疇の問題なのです。
 外来語、擬声、擬音などであっても原理的には小書きにする必要はありません。しかし音を正確に表わすための小書きはむしろ推奨されるべきものです。
 なお、拗音でも促音でもないのに小書きにすることは誤解を招くので避けましょう。

このサイトでは弁別の便を考えて小字を使っていますが、完全版の「練習」以降は並字を使用しています。


 り字(繰り返し符号)について

 同じ仮名を繰り返す場合に「ゝ、ゞ」(片仮名は「ヽ、ヾ」)を使用することがあります。必須ではありませんが実際にはよく使われました。
 「ゝ」は(前の仮名の濁点の有無に関わらず)濁点のない仮名を表わし、「ゞ」は濁点のある仮名を表わします。
 入力法については付録の「入力法について」をごらんください。


 「ん」と「」について

 古文を読むときには助動詞の「む」は「ン」と発音します。しかし、現代仮名遣いの助動詞の「ん」が歴史的仮名遣いでは「む」になるというわけではありませんので注意してください。

 古語の助動詞「む」は概ね鎌倉時代以降、「ん」に取って代わられました。
 古文における助動詞の「む」「ん」は現在ではどちらも「ン」と発音しますので、現代仮名遣いに変えなさいという問題にはどちらも「ん」と答えるべきです。
 では現代仮名遣いの文中で例えば「あらん限り」と書かれたものを歴史的仮名遣いに直せという問題ならばどうすべきでしょう。
 この場合は、現代仮名遣いの文章ならば原則的に古文ではないはずと判断し、したがって「む」である理由がないから「ん」のままであるとするのが妥当です。

古語における「む」と「ん」について参照


 長音の縮について

 例えば「さうして(ソーシテ)」を短く「ソシテ」と発音するともう「さうして」と書くことはできません。「そして」と書かなければなりません。
 同様に「しませう(シマショー)」を短く言うと「しましょ」、「ありがたう(アリガトー)」を短く言うと「ありがと」となります。無理に元の仮名を生かして「しませ」「ありがた」などと書くことはあり得ません。

長音を短縮したときの表記について参照
付録 現-歴文字対応表の発音-文字対応表参照


 語について

 「古語」とは「現代語」の反対語です。今は使われない昔の言葉で、古文に多く含まれているものです。
 歴史的仮名遣いで書かれているからといってそれが古語とは限りません。
 現代語は歴史的仮名遣いででも現代仮名遣いででも書くことができますが、古文・古語は現代仮名遣いで書くことはできません。(学校の国語の問題では古文を現代仮名遣いに変えることがありますが、そのような書き方は実用的に使われることはありません。)

 古語の歴史的仮名遣いおよび古典文法について、このサイトで包括的に調べることはできません。お手持ちの古語辞典などをご参照下さい。
 なお、古語のうち、仮名遣いに留意すべき動詞、形容詞、形容動詞、助動詞などの活用形、助詞については付録の「古典文法事項」に簡単にまとめてあります。


 名の字種(変体仮名)について

 ひらがなの「の」は「乃」を崩してできたものですが、他に「能」や「農」を崩してできたひらがなもあって、これらも「ノ」と発音されます。同様に「か」には「可」など、「こ」には「古」など、「し」には「志」など、「す」には「須」など、「そ」には「楚」など、「た」には「多」など、「に」には「耳」など、「は」には「者」など、「ふ」には「婦」など、「ま」には「満」など、「わ」には「王」など、「を」には「越」など、というふうにほとんどの仮名にはそれぞれ由来の漢字が異なる異体のひらがなが併存しています。また、由来の漢字が同じで崩し方が異なるものもあります。
 これらの異体字は明治時代までは広く使われていましたが、その後字種が整理されて今では殆んど使われなくなり、変体仮名と呼ばれています。
 ひらがなの字種は仮名遣いとは関係のない別範疇の事項です。例えば大昔の文に「乃」由来の仮名と「能」由来の仮名、「農」由来の仮名が混在していたとしても仮名遣い上の意味はないのです。個人の好みや見た目の問題と考えて(原則的に)差し支えありません。
 専用ソフトを利用して変体仮名を使うのも楽しいものですが、ネット上で相手方の画面にも表示させるためには画像化するなどの必要があります。

 「ゐ」「ゑ」は「い」「え」の変体仮名ではありません。全く別の仮名です。
 「い」の変体仮名には例えば「伊」由来のもの、「え」には「江」由来のものがあります。また「ゐ」には「井」、「ゑ」には「衛」由来のものがあります。

仮名文字の系譜参照
「土佐日記」参照


 漢の字体について

 漢字の新字体と旧(正)字体の問題は仮名遣いとは関係のない事項です。考え方や目的により使い分けてください。

旧漢字を使用した文の例:「藪の中」

 旧漢字の入力については付録の「入力法について」をごらんください。

現在の時点では完全な旧漢字表示サイトを作成するのは困難です。このサイトでは原則として新漢字を使用しています。


 体について

 口語体と文語体の違いは仮名遣いとは関係のない問題です。
 文体と仮名遣いの組合せには次の三つがあります。

 1.口語・歴史的仮名

なまへもしらない とほいしまから

昭和前期まで日常的に書かれていた形です。

 2.口語・現代仮名

なまえもしらない とおいしまから

昭和中期以降日常的に書かれるようになった形です。

 3.文語・歴史的仮名

なもしらぬ とほきしまより

昭和前期まで少し改まった文で使われた形です。

 次の4.は正しい組合せではありませんが、現今では古文や文語文をひとまず児童などが読めるように示すときに見られることがあります。

(4.文語・現代仮名)

(なもしらぬ とおきしまより)

 

 なお、前項で述べた漢字の字体についても含めて言えば、このサイトの地の文は原則として白の背景部分では口語・現代仮名・新字、色付きの背景部分では口語・歴史的仮名・新字によっている、ということになります。


 み方について

 歴史的仮名遣いとは「発音は時代とともに変化して来たが書き方は最初のまま変化させずに来た」という原理のものです。ですから今それを読むときには当然今の発音によって読みます。
 基本的には「読み方の決まり」、詳しくは「歴史的仮名遣いの原理」の「歴史的仮名遣いの読み方について」を参照して下さい。


 問仮名遣いについて

 少数の語について正しい歴史的仮名遣いを決定できない事実があります。十分に古く確かな用例を特定できず、また語源や由来も知れないものです。これらについては将来の研究結果に俟つ他はなく、今は暫定的に表記するしかありません。このようなものを「疑問仮名遣い」ということがあります。
 仮名遣いが平安以降完全に一貫してきたわけでも人為的に整備されたものでもなく、またその近代的研究がようやく江戸時代に始まったものでもある以上、避けられない限界です。

疑問仮名遣・許容仮名遣の例参照


  他に細々とした疑問点については補講もごらん下さい。見つからない情報を探すときはサイト内検索を。

  個々の語の仮名遣いを知るためだけならばこのサイトを参照する必要はありません。国語辞典をお引き下さい。ネット上の国語辞典でもOKです。



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